宗教者九条の和

The Third Asia Inter-Religious Conference on Article 9 of the Japanese Peace Constitution
3回 9条アジア宗教者会議 Article 9 and Peace in Asia
 Octover 5-7, 2011 Okinawa Christian University in Okinawa, Japan

3回 9条アジア宗教者会議 |開催日程||趣意書||報告会開催日程
3回沖縄声明文 | |決議文・済州島江汀村に平和を!|キリスト新聞掲載記事(2011/10/22)


第3回「9条アジア宗教者会議」声明
ソウルから沖縄へ
2011・10・7
沖縄キリスト教学院大学

「日本国憲法9条」
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、
永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権はこれを認めない。

1. 第3回9条アジア宗教者会議は、2011年10月5日から7日まで、開催地沖縄を始めとする日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、南アフリカ、スイス、イタリア、カナダ、米国から220名が参集し、沖縄の人びとの体験に耳を傾け、学ぶために沖縄キリスト教大学を会場として開催されました。また、このたびの東日本大震災と福島第一原子力発電所事故による被害者に思いをはせ祈りつつ、いのちの重さを再認識し、ここに以下のことを声明いたします。

2. 日本のおいては、ただの一度も9条は実現したことがありません。とくに日本の領土の0.6%を占めながら、在日米軍の専用施設の74%と自衛隊の存在をおしつけられている沖縄は、憲法9条からもっとも遠い現実を抱え続けています。そればかりでなく、沖縄の軍事基地の県外あるいは国外への移転を言明した鳩山総理大臣は、それを貫徹することができず、むしろ沖縄の軍事基地は持続し、拡大されようとしています。さらに韓国政府から「平和の島」に指定された済州(チェジュ)島では、政府と軍とによって新しく海軍基地が建設されつつあります。私たち9条アジア宗教者会議は、陸、空、海軍施設の無制限の使用を可能にする外国軍基地協定は、沖縄の基地、済州島の海軍基地あるいは訪問米軍に関する米比協定など、すべてを断固として拒否するものであります。

3. 上記の理由に基づき、私たちはつぎのことを決意します。
 日米両国の政府にたいし、日本国憲法9条遵守を要求し、日本政府がこれを改悪するいかなる試みも退けます。
 日本政府にたいし米国への「思いやり予算」を撤廃し、被災地救援に充てることを求めます。
 米国の宗教団体にたいし、米国政府の対沖縄政策について、米国民として加担してきた事実を良心に基づいて見直し、普天間基地と他の沖縄基地の撤去と辺野古の基地建設計画の破棄を主張するように呼びかけます。
 日本政府にたいし、自衛隊の宮古、八重山基地建設計画の撤廃を要求します。
 核兵器の完全廃絶を求め、核エネルギーのすべての利用の継続について問題提起します。
 米国による戦争と「帝国」の構築がもたらしている殺戮の事実を認め、信仰者は、アジア、中東そして世界の軍事化に抵抗して、グローバルな平和運動に参加するように働きかけます。

4. 私たちは、韓国のソウルで開かれた第2回9条アジア宗教者会議声明の中で、9条はこれまでにないほど地域的または国際的に有意義なビジョンであることを確認しました。9条は、正義と平和が実現され、かつ持続可能なアジア共同体の未来を志向する中心的価値であります。

5. 1952年に日本が独立を回復したにもかかわらず、なお20年間沖縄は米軍統治下に置かれ、そのために米軍基地が存置されることになりました。この間、沖縄では、戦争を放棄する憲法9条を持つ日本に復帰したいという願いが大きな運動に発展していきました。その願いがついに実現したのが1972年のいわゆる「本土復帰」でした。しかし、このことにおいてすら沖縄の期待と願いは裏切られる結果となってしまいました。非核3原則を持つ日本に復帰したのですから、当然沖縄にもその原則は適用されるはずでしたが、日米両政府は密約を交わし、沖縄への核兵器持ち込みは米国の判断に委ねられることになりました。沖縄が望んだのは軍事基地のない島、せめて「本土並み」の状態になってほしいということでした。しかし、復帰後も沖縄に米軍基地が置かれる状況は変わりませんでした。そのうえ、さらに「本土並み」ということで自衛隊基地まで置かれることになりました。近年ではそれが宮古・八重山地方まで拡充されようとしています。

6. それは、憲法9条違反の米軍基地と自衛隊の存在を戦後の日本政府が認めてきてしまったからです。「世界で最も危険な基地」(ラムズフェルド元米国防長官の言葉)と言われる普天間基地の撤去とその土地の返還はいまだに目途が立っていません。80%以上の沖縄県民が反対しているにもかかわらず、日本政府は普天間基地の代わりに県内に新たな基地を建設しようとしています。生物多様性の観点からみても日本本土の50~60倍の多様性に富んだ辺野古の海を破壊し、埋め立てて新基地を作ろうとし、高江の森を破壊してヘリパッドを建設しようとしています。そしていまだ撤去されない普天間基地に、また北部に建設しようとしている各施設に、米軍は新型機オプスレイを配備しようとしています。日本政府は沖縄の基地負担軽減を口にしますが、実態はこのように世界的に貴重な沖縄の自然を破壊し、基地や軍備の機能はますます強化されようとしているのです。

7. 日米安全保障条約と日米地位協定とによって、軍隊は日常的に沖縄の人々を苦しめています。その米軍が沖縄から出撃して、朝鮮戦争・ベトナム戦争・湾岸戦争・アフガン戦争・イラク戦争に投入されたのです。そして湾岸戦争以来、日本の自衛隊も米軍と一体となって戦争行為というほかないような行動をしているのです。

8. 日米両政府は沖縄の基地は「抑止力」だといいます。しかし逆にそれは近隣諸国への脅威となっています。私たちは、先祖から譲り受けた大事な土地から発進した爆撃機や軍艦が、地球上のいかなる地域においてもその住民を脅かし、破壊、殺戮するのを黙視することはできません。

9. 軍隊は平和をもたらしません。人びとの権利を尊重することこそ平和をもたらすのです。日米両政府の嘘とまやかしにもかかわらず、日本国憲法の前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」とあるように、私たちはすべての国の人民に「真実の性(しょう)」が有ることを信ずる故に、軍事基地の無い世界を求めます。

10. 琉球(沖縄)は、清国(中国)とは冊封関係にありつつ、平和的交易によって広くアジアの諸国との友好関係を維持していました。1609年、日本の薩摩藩の侵攻によって実質的に薩摩の支配下に置かれることになりました。今年はその時から数えて402年目にあたります。さらに琉球王国は明治政府によって、1879年に、侵略併合され、強制的に日本国の一部とされました。これが「琉球処分」であり、今年はそれから132年目にあたります。沖縄には「非武」の思想の伝統がありましたが、15年戦争の時には武器をとって戦うことを強制されました。さらに沖縄戦では、日本の国家体制護持のための捨石とされました。沖縄の住民は、沖縄守備軍として配置された日本軍によって、軍との「共生共死」を強いられました。住民を巻き込んでの地上戦が行われた沖縄では、日本軍による住民の虐殺、避難壕からの追い出し、さらに軍の命令による「強制集団死」が各地でおこりました。文部科学省は日本の歴史教科書からそうした事実を薄めようとする傾向が強く、それが裁判にまで発展することになりました。しかし最高裁は2011年、座間味島、慶留間島、渡嘉敷島における「集団死」には軍の命令があったことを認めました。

11. 9条アジア宗教者会議がこのように沖縄で開催されたことの意義は、宗教者がこの沖縄の人びとの闘いの現状に触れて真に9条の実現をそれぞれの場で追及し、その実現に向かって歩むことにあるのです。私たちは、米軍基地がアジア各地と全世界に展開されることを阻止し、すべての軍事基地の撤廃のために行動することを誓います。このための道は、宗教者がそれぞれの宗教の立場から平和の実現を祈り、非暴力によって平和を造りだすために行動することであると、私たちは信じています。9条の精神を体現し、生かしていくところに、暴力への応えがあるのです。 
 
第3回「9条アジア宗教者会議」参加者一同


済州島江汀村に平和を!

第3回9条アジア宗教者会議参加者は、宗教の垣根を越えて、平和を愛する諸外国の宗教団体と共に東洋の平和と安全の為に祈りを捧げてきました。済州島江汀(カンジョン)村の海軍基地建設問題は日々深刻になってきています。よって私たちは、江汀村の平和を求めて祈りつつ、以下を宣言します。

済州島は、その手付かずの自然と美しい風景が評価され、UNESCOによって環境保全地域、世界遺産、そして世界ジオパークに認定されています。特に政府が海軍基地を建設しようとしている江汀村は、希少な珊瑚礁や玄武岩がみられるため、絶対保護が求められる環境保全地域とされています。

私たち宗教者は、美しく平和な済州島が、広大な海軍軍事施設を置く東アジアの前進基地となり、近隣アジア諸国との緊張を高めることに大きな懸念を抱いています。真の平和は軍事力ではなく協力と対話によりもたらされるものです。済州島における海軍基地の建設が北東アジアの平和と安定に寄与するとはとても思えません。

私たちはまた政府の意思決定の過程における非民主的手法に注目しています。平和な生活と土地を守ろうとする江汀村の人々の必死の訴えは完全に無視され、村人たちの訴えを抑圧するために暴力的で違法な手段が用いられています。民衆により政府に委ねられた権力は必ず民主的法手続きに則って行使されなければなりませんし、政府が暴力的な手法へ頼ることは決して許されません。私たちは、政府が、非暴力的手段により自らの土地を守ろうと奮闘している江汀村の人々と、誠意ある対話を始めることを要求します。

私たちは海軍基地の建設の即時中止と江汀村の平和の回復に向けて、祈り、そして行動します。

私たちは韓国政府に以下の3点を要求します。

 海軍基地の建設を直ちに中止してください。
 拘束中の江汀村の村民と平和活動家を直ちに釈放してください。
 江汀村の村民との対話を再開してください。

第3回「9条アジア宗教者会議」参加者一同


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